鬼束ちひろについて

ちひろさんを好きな人は、必ずどこかしらに、心の陰のようなものを持っているように思う。
それは、今まで何の失敗もせずに、人生幸せばっかりな人には好かれるような歌詞では決してないからだ。
どちらかというと、何で自分なんて生まれてしまったのだろう。なぜ、生きていかなければいかないのだろう、
というふうに、生きることに不満でもないが、そう思ってる人しか彼女には共感できないと思う。
それも、ちひろさんの中で、おそらく最も有名である“月光”の歌詞がまた、すごいからである。



I'm a god's child
この腐敗した世界に堕とされた

How do I live on such a field
こんなもののために生まれたんじゃない




初めて聞いたとき、なんというか…困った。
私の心にあって、それでも誰にも言ってないようなことをズバりと言い当ててしまったかのような言葉達だったからだ。
この腐敗した世界…彼女はこの世界のことを、そんなふうに思ってるのだろうか。
こんなところでどうやって生きたらいいんだろう…そんな思い、誰しも感じたことはあるだろう。
そして、こんなもののために生まれたんじゃない…自らを神の子と名乗る彼女は、この歌で何を伝えたかったのだろう。
この世界に対する不満か、神様はこんな世界を望んではいなかった、と。
それとも、彼女はただ単に、自分の不満を歌にぶつけただけなのだろうか…とにかくものすごい歌詞だと思った。
最初から、このような歌詞で勝負をしようというちひろさんをすごいと思う。
そしてそのことを訴えようとする、この歌唱力。
この歌は、彼女が歌ってこそ許される。
今、歌はそんなに上手じゃないが、顔とスタイルがよければなんとなくCDが売れてしまう中で、
彼女の実力は正に実に光って見えた。
売れようと思ってこびる様子はみじんもない。それは、シャインからもわかる。



椅子を蹴り倒し席を立てる日を願ってた
ボロボロになって起き上がれる日を願ってた




これで売れようと思っていたかどうか、私にはわからない。
ただ、これらの歌が万人受けはしない、ということも私はよく知っている。
ちひろさんのことを好きな人は死ぬほど好きだが、なんとなく好き、だとか、歌はいいよね、
という人は少ないように思う。私がちひろさんを好きだと言ったら、
「え〜?暗くない?」
と言った知人がいた。確かに、彼女の歌は暗いと思う。
私はそこがたまらなく好きだ。
こんなにも絶望を堂々と歌える、そんな彼女が本当に好きだと思う。

私がちひろさんに出会ったのは、ちひろさんファンなら誰もが知ってるテレビ朝日系のドラマ、
「TRICK」でだ。そのドラマの主題歌を歌っていたのが、ちひろさんである。
このドラマ自体も楽しみだったが、最後のエンディングもかなり気になるものであった。
だが、そこで私は動こうとしなかった。
ものすごく歌詞に感動したのは確かである。


「この腐敗した世界に落とされた」「こんなもののために生まれたんじゃない」

共感した、というより、圧倒された。そして、なんだか嬉しく思った。
そう思って生きてるのは、何も私だけではないんだ、と力をもらったような気がする。


今思えばこの頃から私はちひろさんにつかまっていたのだろう――…

そして私がちひろさんの歌を聞いたのは、「眩暈」のときだろう。
この歌詞もまた、すごい


あなたの腕が声が背中がここに在って私の乾いた地面を雨が打つ
逃げることなどできない貴方は何処までも追って来るって
泣きたいくらいにわかるから



適当に聞くと、この歌は怖い歌のようにも聞こえる。
逃げても逃げても追ってくる貴方というのは、一体
私の何なのだろう、と…
この話をちひろさんファンの人に話すと、誰でも笑う
この歌はラブソングだそうだ。
なんてチンプンカンプンなんだ、自分、みたいな…

ホントの意味は、どんなに考えまいとしても貴方のことが
頭から離れないわ、という意味らしい。
その話を聞いたとき、正直、なるほど、と思った

とこの歌の歌詞まで知ったのは、ちょっと後になってだが、
私が始めて眩暈を聞いたのは、友達が真似をしていたからだ。
たぶんだけど、この歌を歌うときのちひろさんの左手はよく真似られてたのでは、
と思う。まぁ、うちの学校にいた、あの子だけがしてたのかもしれないが…笑
彼女のする、ちひろさんのもの真似とは、歌いながら、左手をとにかく縦に振る、
振る。そんな歌い方を本当にしてるのかと思ったら、Mステに出てた彼女は、
本当にそんな感じであったからビックリした。


どちらが先だったかは覚えてないが、彼女はTRICKの主題歌をずっとしてた
他にもう一つ、「氷点」の主題歌も歌っていた。
このドラマをもう一度見たいと思って、TSUTAYAに借りに行ったが、
昔はおいていたが今はおいてない、とのこと。
かなりガッカリした。 このドラマに使われている「infection」は、歌詞も謎が多いが、
PVも謎だ。ストリーになっているらしいが、
どんな話だか、ちょっとやそっとじゃわからない、そんな神秘的なPVになっている。
この歌の歌詞で、印象的なのは、なんといっても最後の


いつの間に私はこんなに弱くなったのだろう



だろう…
ドラマの中でも、一番のクライマックスの中、ちひろさんの歌声が鳴り響き、
もう終わる、というときにいつも弱弱しい感じで歌い上げるちひろさんの
「いつの間に私はこんなに弱くなったのだろう」
が入る。この歌は、ドラマにとっても影響を与えていたと私は考える。



この頃かな、私がちひろさんのアルバム、「INSOMNIA」を図書館で借りたのは。
そこまで本格的にハマってなかった私は、無料で借りられる図書館で借りることにした。
といっても面倒くさがりな私は、そんなにCDを借りたりもしなかったので、
借りただけでも相当好きだ、ということを示しているとは思うけど…


どの歌も、月光のときに感じたのと同じく、絶望を歌っていた。
このHPの題名にも使っていたのと同じ「イノセンス」というタイトルの2曲目
実は私はこのHPのタイトルは、ドフトエフスキーを読んでから
「罪と罰」にしようと思ったのと、
ちひろさんの歌の題名に、罪を歌ったものがあったので、
前は「イノセンス」にさせていただいていたのだ。


私は、罪という言葉に敏感である


それは私が罪人だからだと思うし、
これからもその罪を一生背負って生きようといつの日か決意したからだ。
だからもちろんこの歌で印象的なのは、


僕は無罪だって何度僕に言い聞かせれば笑ってくれるの



というところだ。
無罪だと言い聞かせる?それと笑ってくれるがどう関連するのか、
私にはわからない。
また、私は自分を無罪だといえるほど強くはない。
そしてこの歌の好きなところは、使われている単語だ

暴言

剥がれ行く

闇から逃げられずに

感情が苦い

僕は無罪だけど

君が奪って行く

踏みにじった

etc…

だ。このように、心に突き刺さるような単語が多い。
だから私はこの歌が好きだ。
そして、また好きなフレーズがここ


いつだって同じいつだって非道く汚い僕がいる



彼女が自分のことを醜いと表現した。
私も自分のことは私の犯した罪ゆえ醜いと思っている。
でも、彼女は自分のことを無実だと言える。
私にはできない。
だから私は、自分で自分を真っ黒だと…思い込んでいるのだ。
そんな私にとって、やはりちひろさんは…"救い"だと思う。
本当にそう思う。
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2004年夏



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