「えっ、何?!」
とまどう彼女の口を、僕の唇でふさいでやった。
「いや〜!!何するの?!やめてっ!!」
彼女は必死に抵抗してくる。僕はでも、やめない。
夢にまで見た彼女の唇の感触を楽しむ間もなく、
僕は彼女に頭を思いっきり殴られていた。
僕はなぜ、彼女に殴られなければならないのかわからなかった。
彼女も僕を愛してるはずだった。

――…なぜだ?

そう思って僕が半ば放心してている間に彼女は哲雄に電話をしたようだ。
「もしもし、助けて!!私の家!!」
「典子…」
「僕のことを、愛していないのか?」
「そんなわけないじゃない、何言ってるの?!」
「お前は…哲雄とかいうあの男が好きなのか?」
彼女は何も言わなかった。
でも僕はわかったんだ。
「うぉー!!!!」

僕は思い切り叫んでいた。
「殺してやるぅ〜こ、殺してやるぅ〜!!」
僕はそういうと彼女の家を出ようとしていた。
そんな僕を彼女は抑えた。
「やめて!あの人には関係ないことよ」
「あいつのせいだ、あいつさえいなければ、君は、
僕のことを愛してるはずだ!」
「哲雄は関係ないの。お願い、彼には何もしないで…」

そう言って彼女は涙ぐみ、ポロポロときれいな涙を流し始めていた。
どれほどそのまま沈黙が、そして静寂が続いていただろう。
僕はそんな彼女の姿に心を打たれ、ほだされた…

「ごめん、ごめんよ。僕は、僕のことを愛して欲しいだけなんだ。」
「私がそうなったら、哲雄には何もしない?」
「しないさ。彼もまた、僕と同じように君にひかれ、
僕がいたためその思いがかなわなかっただけじゃないか。」
「そう、それでもいいわ」
諦めたように、小さく彼女が言った。

そんなところににっくきあいつが来た。
「典子!!典子大丈夫か!!?典子!!」
哲雄は自分の持っていた合鍵でドアを開けようとした。
「ダメ!!来ちゃダメ!!」
典子がそう叫ぶ。

その姿に僕は典子の哲雄への思いを思い知らされるようで、
目が覚めた。
「くっそぉ〜」
僕は哲雄を中に招きいれようとした。
ドアの鍵を開け、哲雄を押さえつけた。
「おまえのせいで…おまえのせいで…」
僕はすごい形相で哲雄をにらむと、哲雄は典子の無事を安心したかのように
「典子…無事だったか…」
と半分涙を流しながら言った。

その目線のやりとりは、お互いに
"愛してる"
と言っているようだった。
「許さない!!俺の典子を!!」
僕はそう叫ぶと、
後ろ右ポッケに隠し持っていた包丁を哲雄に切りつけていた。
「典子は俺のもんだー!!!!!」
俺はそう叫んだ後、思いっきり、哲雄の急所ねらって
突っ走っていた…



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